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壁に耳あり/なら

「民族ことわざ体験館」はポコペン共和国の隠れた名所であると聞いていたので、到着したその日にさっそく行ってみたのだが、そこは大きなビルが建っているだけで、情緒豊かな民族村みたいなものを想像していた私には少し期待はずれだった。

 中に入ると、ちょび髭を生やした嫌味なダリ風な紳士が、きざなサングラスにフロックコートで向かえてくれた。
 「ここは、ことわざを体験できる場所です、お好みのことわざはありますか?」諺の体験って変な表現を使われてちょっと笑ってしまった。
 
 「そうだなぁ、じゃぁ 壁に耳あり をお願いします。」とっさに思いつかなかったので、そんなものを頼んだのだが、それが諺なのかちょっと頼りない。
 「かしこまりました、そこでしばらくお待ちください」
そう言うと彼は私を廊下にある椅子に案内した。入場料は15万ポコペンもしたのだからもっと豪華な待合室を想像していたのでちょっと心外だった。
 
 椅子に座って待っていると、廊下をぞろぞろとスレーブの連中が通っていった。ご存知のようにポコペン共和国は奴隷制の国で、街のいたるところでスレーブと呼ばれる奴隷を見かけるのだが、この集団は100人はいようかという大集団で、こんな大勢一緒にいるのは初めて見た。彼らは軍隊風に顔を正面に向けて行進しているのだが、どいつもこいつも恨めしそうに私も見ていくのだ。それも顔を動かさないで右顔の右目を思いっきり寄せて睨むのだ。多分、外国人に奴隷の辛さを教えようとして、同情をひいているのだろうが、そんなことをされても困る。わたしも、年末のユニセフへ奴隷救済募金をした事もあるのだから、恨めしそうに見るのは筋違いだと思う。
 
 「お待たせしました、こちらへどうぞ。」そんなことを考えているとさっきの案内係が戻ってきた。
 案内されたのは、広い体育館の真ん中で、そこにドラマのセットみたいな部屋が作られていた。多分リクエストに合わせてあわてて今作ったに違いない、四方の壁の外側は色もつけてなくてベニヤ板の地肌がむき出しになっていた。 
 とりあえず、中に入ったのだが、入ってびっくり。そこは、安キャバレーみたいな桃色電灯の薄暗い部屋で、の四方の壁には耳がびっしり貼ってあったのだ。ちょっと諺の意味を誤解しているようである。異様な風景ではあるが、じっと見ているとばかばかしくて笑いがこみ上げてきた。「近くによって触っても良いですよ」と案内係の声に誘われて近づいてみた。
 こわごわ触ってみると、こりこりしていて、妙に生暖かい。
   ナ・マ・ア・タ・タ・カ・イ?!
あれ?と思って、思わず耳たぶを口に含んでみた。覚えのある、このこりこり感。(興奮している場合ではない)力を入れてみるとプチと音がして、少ししょっぱい味が口に広がる。あわててぬぐうと手の甲に赤いものがついた。
 はぁ?!と思って良く見ると、耳はどれもこれも形が違っている。血がこびりついているものもある。しかも、その血はたらたらと半分くらい流れて固まっていた。
 その時完全に理解したのだが、すべて本物の耳なのだ。この耳はまさに今そぎ落とされて壁に貼り付けられたものなのだ。そしてそれらはおそらく、さっきのスレーブの集団の左耳に違いない。彼らは私に右顔しか見せなかったのだが、きっとその反対側は、耳が切られて血まみれだったに違いない、激痛に耐えながらその原因となった私を恨みを込めて睨んでいたのだ・・・ぞっとして、足ががくがく震えてきた。
  「お客さん、堪能されましたか?」案内係りがにっこり笑って私に話しかけてきた。
 「も、も、、もう結構です」
 「ありがとうございます。次はサービスで 障子に目ありの部屋をご案内します。」
「し、し、障子に目ありって、そ・そ・れって・・・」僕は腰が抜けてしまった。

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テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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