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お見事!/ちとく

冬休み間近の放課後、少年は、校門に近いポプラの並ぶ辺りで、竹串より幾分太めの細かい枯れ枝を拾い集め、それを井桁に組んでいた。タテヨコ10cm程度の井桁の塔は、今、何よりも少年を夢中にしていた。
そこに、少年と同じクラスの優等生一味が通り掛った。
「お!キャンプファイヤーか?放火か?」
内気で、優等生に劣等感を持つ少年は、黙って井桁を組み続けた。一味のリーダー格が「手伝いまーす」とわざわざ敬語を使い、落ち葉を抱えて少年の井桁に放り投げた。
「よせ!」少年は、井桁を台無しにした落ち葉を、リーダー格らに向けて手荒く払った。
「チョメゾーのくせに!」リーダー格が少年の胸倉を掴むと、少年もリーダー格の上着に手をかけた。
その時、優等生一味の背後から、勇ましく甲高い声が響いた。「やめてよ!来年中学生なのに!」
声の主は、クラスで一番人気のマドンナで、優等生一味は誰もが狼狽した。彼らが気を取られている隙に、少年は胸倉の手を払いのけ、枯れ枝の回収に取り掛かった。
彼ら、特にリーダー格はマドンナに弱く、一方的に責められて校門から出て行った。それを見送ったマドンナは、相変わらず一心に枯れ枝を拾っている少年を扱いかね、なぜか手伝わなければならない気がした。
「こういうやつ拾えばいい?」「あ、うん、同じくらいの」
少年は、思わぬ共同作業に緊張はしたものの、暮れかかる寒空に気が急いた。
少年が井桁を組み始めると、マドンナも同じ井桁に枝を差したが、いちいち少年が置き直すので、隣に別の井桁を組んだ。少年とマドンナは、同じ枯れ枝の山から、二本ずつ抜いては井桁に積む作業を黙々と続けた。
少年の井桁が膝の高さを越えた頃、町のチャイムが夕方5時を告げ、マドンナは背伸びをして少年を見た。
「すごい、倍はあるね。悔しいけど、今日はここまで。明日の朝、早く来て続きしようかな。5時過ぎたよ、学校出ないと!」
少年は、マドンナが「さわるな!」の意味を込めて、地面に囲い線を引いたりするから、仕方なしに井桁から離れた。マドンナの、低くて歪な井桁に比べて、少年の井桁は真っ直ぐ上に伸びて、塔と呼ぶに相応しいものだった。
二人で校門を出てから、マドンナは内気な少年に気を使って、色々なお喋りをした。少年は、マドンナが頭が良くて美人だと以前から知ってはいたけれども、そのお喋りには殆ど興味が持てなかった。T字路に差し掛かり、「私こっち、明日の朝カメラ持ってくから!」とマドンナは少年に手を振り、快活なウインクを飛ばした。少年は、ぎこちない会釈を返した。
一人になった少年は、遅めに歩いては振り返り、マドンナの行方を眼で追った。何度か繰り返した後、彼女が角を曲がって見えなくなった。少年は足を止め、ジャンバーのポケットから手を出して、ランドセルの肩紐を握った。そのまま数秒間、マドンナがもう来ないことを確認した。「よし!」
少年は一目散に駆け出して、マドンナと歩いた道を小学校まで戻り、半開きの校門もノンストップで、井桁の塔の前に躍り出た。
最初に、低くて歪な井桁。右足を井桁の真上に上げて一旦静止、そしてクシャ!
次いで井桁の塔。念の為ランドセルを下ろし、井桁の上に高々とジャンプ!両ひざを抱えるように、塔の真上から垂直に、出来るだけ膝を伸ばさず、一気に下まで、グッシャア!「ヒョッホオー!」
見事、井桁を木っ端微塵にした少年は、意気揚々と下校したのであった。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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