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少年の狙い/ちとく

晴天が続いたある真夏日の午後、団地内の焼けたアスファルトには、干からびたミミズの死骸が目立った。
毎年ある時期の、雨の翌日などにはよくあることで、誰も気に留めなかった。けれども子供たちは、程度の差こそあれ、みな一様に注視し興奮した。
その日少年は、自宅の棟の前で、ひと際大きい干からびたミミズを見つけた。友人宅に立ち寄り、連れだってプールに行く予定だったが、約束の時間まで少し余裕があった少年は、干からびたミミズの脇にしゃがみこんだ。よく見ると2匹のミミズが絡まっているように見え、どこが絡まっているのか、2匹ならどことどこが頭なのか、少年は念入りに観察するのであった。
そこに、Tシャツとスカートがはち切れんばかりの巨漢姉妹が通りかかった。少年よりいくつか学年は上だったが、近所の顔なじみで小学校も同じ巨漢姉妹は、少年が熱い眼差しを向ける干からびたミミズに、汗の滴る大きな顔を近づけた。
「ね、食べられるかな?」「ええー、どんな味?」
少年の向かいに並んでしゃがみこんだ巨漢姉妹の呟きを、少年は冗談とも本気とも取らなかったが、母親の作る切干大根の煮物など思い出したりした。
「水鉄砲持ってくるから!」少年が咄嗟に言うと、「いいね」「やろう」と巨漢姉妹が応じた。少年は、肩のプールバッグを置いて、団地の階段を駆け上がった。
しばらくして少年が戻ってくると、干からびたミミズは巨漢姉妹によって階段入口の日陰に移動させられていた。さらには、何体かのミミズの死骸が加えられていて、少年が注目した、絡まった大きい死骸が分からなくなってしまっていた。

少年が持ってきたのは、歯磨きコップに入った水と、弁当に使う魚の形の醤油さしであった。「水鉄砲見つからんかった」
巨漢姉妹は、「水鉄砲って言ったじゃん」「コップの水かければいいじゃん」と少年を軽く責めた。
少年は、主導権を奪われそうな危機を苦笑いでかわし、自ら先にしゃがんで、醤油さしに水を吸わせた。「見てて、見てて」
巨漢姉妹が、先ほどと同じようにしゃがんだところで、少年は干からびたミミズに向けて小さな水鉄砲を発射した。ビュッ!
しばらく声も出ないほど、干からびたミミズは全く変化なかった。
立ち上がろうとする巨漢姉妹を、少年は危機感を持って制した。「待って、見て!」
巨漢姉妹が再び干からびたミミズを凝視する間に、少年はコップから醤油さしに水を吸わせた。干からびたミミズは、相変わらず変化なかった。
「よーく見て!」
少年は息を殺して、慎重に狙いを定めた。慎重に、慎重に。
少年の勿体ぶりに業を煮やした巨漢姉妹が何か言おうとした時、少年の小さな水鉄砲は狙い通りに発射された。ビュッ!
巨漢姉妹のほくろの多い方の股間、ふとももに挟まれてパンツがぷっくり盛り上がっている部分に、少年の小さな水鉄砲から発射された威勢のいい水が命中した。
「ちょっと、おい!」
巨漢姉妹のもう片方、色の白い方が立ち上がるや否や、少年は歯磨きコップも醤油さしも投げ捨てて、プールバッグを持って走り去った。全速力で走れないほど笑いがこみ上げてきて、少年は何度も何度も転びそうになったのであった。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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